2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発して以降、円安の流れが止まりません。この円安に物価高が重なって、エネルギーや食料品など、身の回りのさまざまなものが値上がりはじめています。高級時計も例外ではなく、多くのブランドで価格改定が行われており、スイスフランが140台になってしまっては仕方のない事だと思います。
黒田総裁は「円安は日本経済にプラスだ」と言い続けてきましたが、さすがにここへきて口を濁らせています。企業間取引の価格である「国内企業物価指数」は4月に前年同月比10.0%も上昇。1980年以来の2ケタの伸びになり、輸入原材料価格の上昇がまだ消費者物価に転嫁されていないことを示していて、今後もそう簡単には物価上昇、つまりインフレは収まりそうにありません。時計業界もこの影響を受けて更なる価格上昇があると考えられます。
日本銀行が大規模金融緩和の政策を維持するとしているため、金利引き上げに動いている米国との金利差が広がり、さらに円安が進む懸念が出ています。それぞれの国内物価などを勘案した「実質実効為替レート」で見ると、50年ぶりの円安水準に当たる。50年前は1ドル=300円を超えていましたが、今の円はその当時並みに「弱い」と言われてます。1ドル=130円といっても米国がインフレでドル自体の価値が落ちているため、気が付かないうちに、円は価値を失っているのです。輸入物価が急騰している背景には、海外でのドル建て価格の上昇もありますが、円安の影響も大きいと思います。
輸入に依存している品目に関してはデフレの時代が終わった言っても過言ではないでしょう。四半世紀にわたってデフレに慣れてきた日本人にとって、衝撃的な変化とも言えるでしょう。同じものが半年後には値段が上がっている、ということが皆の共通認識になってきたのです。「物価は下がるもの」という前提が一変し、「物価は上がり続ける」というマインドに急速に変わりつつあると考えられます。
高級品市場の一時的なブームの可能性
この物価見通しへの変化が、高級品市場に一時的なブームをもたらす可能性があります。買おうと思っていた高級時計の価格が上昇するのは確実となれば、値上がり前に買っておこうという動きが現れるのは間違いありません。消費税率が5%から8%に上がった時の、猛烈な駆け込み需要を覚えている人も多いと思います。3%分の値上がりを避けるために一気に顧客が殺到、高級宝飾品売り場からめぼしい品物が消える現象が起こりました。今回の円安による価格上昇はおそらく3%では済まないと多くの人たちが感じています。買えるうちに買っておこう、と思う人が増え、都内のブランドショップでは入場制限をして販売してるブランドも出てきています。
今後、海外に出かける機会がさらに増えれば、米国などでの物価上昇を痛感することになるでしょう。そこで円の弱さを実感させられるでしょう。
資産としての高級時計選び
このインフレにどう対抗して資産を保全するか。今や、ドル建て資産や、金などの実物資産への投資が大きな流れになっています。円の預貯金の一部を今のうちに価値が下がらない現物に交換しておこうという考え方です。その対象に高級時計も例外になく入るでしょう。国際的に流通するトップブランドの高級時計なら、中古品のリセールバリューも物価上昇と共に上がることが考えられます。すでにそうした価格上昇は始まっており、資産価値に注目するブランド品専門誌の記事も多くなってます。
今回の悪いインフレは消費者全体にとってはマイナスと考えられ、新型コロナ禍で消費が減っていた分、余裕のある人たちの貯蓄は増え、ここにきて消費余力も増しています。今後は格差がますます広がることと思われます。こうしたインフレ対策の一環として、改めて検討して時計購入を検討するのもありなのではないでしょうか。